メタバースにブロックチェーンはどのように関わるのか
メタバースとブロックチェーンの関係性
ブロックチェーンは自律分散システムの一種ですが、そもそも分散システムとはどのようなものでしょうか? 本記事では分散システムの概要や形態、メリット、デメリットなどについて解説します。現在も普及が進む分散システムを自社でも活用したい方はぜひ参考にしてください。
目次
分散システムとは、ネットワークでつながる複数のコンピュータで作業を分担するシステムのことです。作業の分担によって各コンピュータにかかる負荷を分散でき、処理の安定化を図れます。分散システムは一見、単独の高性能コンピュータのように見えますが、実際は多くのコンピュータが協調して処理を分担しています。
分散システムはこれまで、企業や学校などで多く採用されていました。しかし、現在ではインターネット回線を利用した分散システムの普及により、その活用の幅を広げています。
特に、コンピュータを「サーバ」と「クライアント」に分けて役割を分担する「クライアントサーバーシステム」を採用するシステムやサービスが普及しています。
暗号資産の基幹技術である「ブロックチェーン」は、分散システムの一種です。ブロックチェーンは「分散型台帳技術」とも呼ばれ、ネットワークを構成する複数のコンピューターに暗号技術を組み合わせ、取引情報などを記録します。
そして、一定期間内の取引データをブロック単位にまとめ、コンピューター同士が検証し合いながら正しい記録を鎖のようにつないで保存することから「ブロックチェーン」と呼ばれているのです。
ブロックチェーンに関する詳しい内容は次のページで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
複数のコンピュータをネットワークでつなげる「集中システム」とは異なり、中央に1台の大きなコンピュータを設置して処理を集中させるのが「集中システム」です。
集中システムは分散システムに比べて運用管理やセキュリティ対策がしやすく、信頼性が高い点が特徴といえます。ただし、集中システムは中央のコンピュータに処理が集中するため、万が一障害などが発生すると関連するすべての処理が停止します。
さらに、復旧にも多くの時間を要するため、現在では集中システムのデメリットを解消できる分散システムが主流となっているのです。
複数のコンピュータがネットワークで相互接続される分散システムは、大きく2つの種類に分かれます。
ここでは、種類ごとの特徴について詳しくみていきましょう。
垂直型分散システムとは、ネットワークでつながる複数のコンピュータに上下関係を持たせてる分散システムのことです。具体的には、大型のコンピュータを中心として、中型や小型のコンピュータがぶら下がるように構成されています。
構成的には集中システムに似ているものの、垂直型分散システムでは各コンピュータが異なる処理を実行するため、中心に配置される大型コンピュータの負荷を軽減できます。
例えば、本社以外に支店や営業所を構える企業などでは「本社には大型のコンピュータ」「支店や営業所には中型・小型のコンピュータ」といった形で配置されるケースが多いです。
水平型分散システムとは、処理能力が同等のコンピュータを対等に接続する分散システムのことです。垂直型分散システムのようにコンピュータ間に上下関係を持たさず、処理を分散します。
さらに、水平型分散システムは1つの大きな処理を分散させて負荷の平均化を図る「水平負荷分散システム」や機能ごとに処理を分散する「水平機能分散システム」に分けられます。
企業のネットワーク内で「プリント」「ファイル管理」といったように、用途ごとにサーバを用意するシステムなどが水平型分散システムに該当します。
昨今、主流になりつつある分散システムが持つメリットは次の4つです。
ここでは、各メリットに関する詳しい内容について解説します。
前述の通り、分散システムは複数のコンピュータで処理を分担するため、1つのコンピュータにかかる負荷の分散が可能です。また、1台のコンピュータを中央に配置する集中システムに比べ、処理の高速化を図れます。
さらに、1台のコンピュータでは対応しきれないような情報も、負荷を分散することで処理を可能にできます。
複数のコンピュータで処理する分散システムは、システム全体のダウンを防げます。集中システムの場合、中央に配置する1つのコンピュータに故障や障害が発生すると、システム全体がダウンしていました。
一方、分散システムであれば1台のコンピュータに不具合が生じても、他のコンピュータで処理を続けられるため、システム全体がダウンすることがありません。さらに、不具合が生じたコンピュータのみを修理・交換するだけで元の処理が再開できる点も大きなメリットといえます。
中央に大型コンピュータを要する集中システムに比べ、分散システムの方が導入コストを抑えられます。分散システムで利用される小型や中型のコンピュータはそれほど性能が高くない代わりに、低価格での購入が可能です。
さらに、システムに必要な処理能力やスピード、機能などに応じてコストを調整しやすく、結果として集中システムよりも導入コストが低くなります。
分散システムは自由にコンピュータを追加したり、削除したりできるためシステムを増減しやすい点もメリットの1つです。目的に応じてシステムを拡張したり、後から機能を追加したりといったことも容易に実現できます。
さらに、あらかじめ予備のコンピュータを準備しておけば、万が一トラブルが生じた際もすぐに交換が可能です。
多くのメリットを得られる分散システムですが、いくつかのデメリットがあるのも事実です。分散システムにおける主なデメリットに次の2つが挙げられます。
ここでは、各デメリットに関する詳しい内容を解説します。
1台の大型コンピュータで処理する集中システムに比べ、分散システムはセキュリティ対策に手間や費用がかかります。なぜなら、分散システムの場合はネットワークでつながるすべてのコンピュータに対してセキュリティ対策を施す必要があるからです。
さらに、ネットワーク内にファイアウォールなどの機器設置も必要であり、セキュリティに関するコストと難易度のいずれも分散システムの方が高くなります。
複数のコンピュータを使用する分散システムは、運用管理が複雑になりやすいです。コンピュータをアップデートしたり、ネットワークトラブルを監視したりといった手間は、コンピュータの台数が増えるほどに大きくなります。
さらに、システムにトラブルが生じた際は、故障しているコンピュータの特定にも多くの時間を要します。
ネットワークに負荷が増える可能性がある点もデメリットといえます。通信などに用いる周波数の範囲を示す「帯域幅」は無限にありません。
そのため、通信量が増えるほどにネットワークへの負荷は高まります。また、コンピューター間のネットワークの品質や回線の速さにもバラツキがあります。
ただし、分散システムは正常に動作している状態を前提としていることから、大きなネットワーク障害が生じるとシステム自体に大きなダメージを与えかねません。
多くのメリットがある分散システムの進化形として「自律分散システム」が注目されています。自律分散システムとは、中央に大型コンピュータを持たず、ネットワークでつながる
複数のコンピュータが自律的に行動するシステムのことです。
通常の状態は、それぞれに分担された処理を複数のコンピュータが単独で実行します。しかし、連携を要する処理があると判断すると、各コンピュータに協力要請が出され、全体が連携して機能するようになっているのです。
システムダウンのリスクが非常に低く、信頼性を担保できることから、工場の自動生産システムや新幹線などのICカードシステムなど、常に多くの処理を要する分野のシステムで活用されています。
分散システムが持つ「低コスト」や「障害に強い」といった特徴は、さまざまなシステムで活用されています。しかし、分散システムのデメリットである「運用管理が複雑になりやすい」「セキュリティ対策に手間や費用がかかる」といった点は、止まることを許されないインフラ分野では不安が残ります。
そこで、今後はシステムが自律的に行動する「自律分散システム」がますます求められる時代となるでしょう。信頼性が高く、柔軟に最適化を図れる自立分散システムはさらに進化し、より私達の身近で利用されることが予想されます。