トレーサビリティとは何か? 種類・必要性・ブロックチェーンとの関係
トレーサビリティとは何?
ブロックチェーン技術はさまざま分野で活用されつつあります。特に、デジタル化が進みはじめている教育分野は、ブロックチェーン技術によって大きく変革するとして注目の分野です。そこで、当記事では、教育分野におけるブロックチェーン技術の可能性や活用事例などについて詳しく紹介します。
教育分野におけるブロックチェーンの可能性としては次の3つが挙げられます。
教育分野の根本から変えるかもしれないブロックチェーンの可能性について、それぞれ詳しく解説します。
ブロックチェーンの活用は、学歴や成績などの対外的な証明が可能です。ブロックチェーン上にデータを保存することで、1つの情報源を参照するだけで学位や成績などを確認できます。
また、保存後のデータ改ざんは極めて難しく、信頼性が担保される点も大きな特徴です。ただし、ブロックチェーン上に学歴や成績などのデータを保存するには、第三者機関による信頼性の担保が必要という課題も残されています。
ブロックチェーン技術は、学習達成度やスキル習熟度の可視化にもつながります。学習の達成度やスキル習熟度の可視化が必要なのは学生だけではありません。
新人育成など社会人にも必要なものです。ブロックチェーンを活用すればスキルの習熟度などを細かい単位に分けて証明する「マイクロクレデンシャル」の可視化も実現できます。学生のみならず、企業の人材育成にも効果を発揮します。
デジタル証明書によるコスト削減も目指せます。例えば、卒業証書の印刷には一般的に「4~6週間」程度の期間を要し、さらには印刷コストも生じます。しかし、印刷を必要としないデジタルの卒業証書であれば、発行にかかる時間や手間を大きく減らせるのです。
また、紙の証明書では記載内容の虚偽や誤植を検証する必要がありました。一方、デジタル証明書であれば、ブロックチェーンによって信頼性が担保されているため、検証の手間も省けます。
学歴や成績などの対外的な証明や習熟度の可視化につながるブロックチェーン技術。そんなブロックチェーン技術における教育分野への活用事例として、次の7つが挙げられます。
ここでは、それぞれの活用事例に関する詳しい内容ついてみていきましょう。
私立の総合大学である「慶應義塾大学」では、ブロックチェーンを成績情報や教員からの評価を入力・管理しているシステムへ組み込むことを検討しています。学生自身が個人情報の公開範囲をコントロールできる機能の実装も計画しており、この機能を活用すれば取得した学生の個人情報を企業が不正利用するリスクの軽減が可能です。
周囲の客観的な評価を企業へ開示できる他、個人情報の管理や廃棄、許諾作業の手間も省けます。
参考:慶應義塾大学FinTEKセンターとIGS、ブロックチェーンによる学生の個人情報管理プラットフォームを共同開発 三菱UFJ銀行、SOMPOホールディングス、住友生命が実証研究に参画
「Blockcerts(ブロックサーツ)は」ブロックチェーンを活用した学位証明の先駆けで、2015年にスタートしたプロジェクトです。ブロックチェーン企業である「Learning Machine Technologies」と共同開発したオープン規格となっており、学校はこの規格を基盤に資格情報の発行や閲覧などを行っています。
ブロックチェーンに記録される学位証明は改ざんが難しく、信頼性を担保できることから、2017年にはデジタル卒業証明書を受け取る選択肢も実装されました。
参考:Blockcerts
「Solve.Care」はグローバルヘルスケアテクノロジー企業です。Solve.Careはブロックチェーンベースの健康管理プラットフォーム「Team.Care Network」の活用をして、生徒や教員などの安全確保を支援しています。
具体的には、Team.Care Networkを活用することで、プライバシーを保護しながら新型コロナウイルスの感染状況の確認や健康などに関する情報を管理できます。そして、収集した情報をもとに正確な状況分析ができるため、陽性反応が出た際の迅速な対策立案や実行につなげているのです。
バングラディッシュの「Bangladesh Computer Council」では、ブロックチェーンを活用して小学校教師の電子年金システムの効率向上に向けた取り組みを行っています。既存システムでは、人為的なミスやサイバー犯罪などによって情報漏洩や不払いなどのリスクが問題となっていました。
この取り組みでは、概念実証(PoC)を通じて、バングラディッシュにある学校の年金制度の透明性ならびに、安全性を高められるとして注目を集めています。
参考:教師に支払われる年金制度をブロックチェーンで運営するPoC – 【2022年最新情報】ブロックチェーンビジネス・メディア【技術開発ニュース・業界別の活用事例・レビュー】
テクノロジーを最大限に活用して世界中の多様な教育ニーズの充足を目指す「ソニー・グローバルエデュケーション」は、教育分野のブロックチェーン事業に参入し、活動記録などを管理する技術「EDN(Education Data Network)」を発表しています。
EDNでは、1人が生涯をかけて学んだ学習内容をデータとして蓄積・活用できる教育データネットワークです。EDNを効率的に活用すれば、教育データの信頼性向上や教育データの非中央集権化を行えます。
参考:質の高い教育と学びの機会をブロックチェーンが創出する! – 【2022年最新情報】ブロックチェーンビジネス・メディア【技術開発ニュース・業界別の活用事例・レビュー】
イノベーティブな研究で知られる全米有数の公立大学である「アリゾナ州立大学」はsalesforceのブロックチェーンを活用して、他機関と共有可能な教育ネットワークを設計しています。
毎年多くのコミュニティカレッジの学習者がアリゾナ州立大学に編入していますが、編入生の中には短期大学の学術称号を取得できずに卒業する学習者がいるのも事実です。
そこで、アリゾナ州立大学ではブロックチェーンの分散型台帳テクノロジーを活用し、編入生の学業成績などを共有できる教育ネットワークの構築を目指しています。学士号を授与できるだけの単位を獲得できているかを大学側で監視できるようになれば、学術称号を取得せずに卒業するリスクの軽減を見込めます。
参考:アリゾナ州立大学がSalesforce のブロックチェーンを使って教育プラットホームを設計
インドにおける国立高等教育機関の1である「インド経営大学アーメダバード校」では、ブロックチェーンを選択科目として加えており、学生にはブロックチェーンの知識を得るチャンスが用意されています。
また、国家プロジェクト「NPTEL」では、世界最大手規模のIT企業であるIBMとも協力してブロックチェーンのオンラインコースを提供しています。IT産業の発展が目覚ましいインドでは、特にブロックチェーンの活用が大変注目されており、多くのブロックチェーンエンジニアを輩出するために国を挙げて教育体制が強化されているのです。
金融やメタバースといった分野で聞かれることの多かったブロックチェーン技術。しかし、ブロックチェーンの技術向上にともなって、教育分野にも大きな影響を与えつつあります。
これまでの教育分野では学歴や結果ばかりが評価され、学習歴は評価されない傾向にありました。しかし、ブロックチェーンを活用すれば学習達成度やスキル習熟度なども可視化できるようになり、異なる教育機関で共有すれば学習歴などの経緯も評価軸にできるでしょう。
教育の当たり前を大きく変革する可能性があるブロックチェーン。今後もその動向から目が離せません。